銀製の茶筒

茶筒


一生モノとは、今もこれからもずっと使い続けるモノ。私にとってのそれは、父から譲り受けた銀製の茶筒である。

小さな丸い槌目が全体に施され、銀色でなく黒い。もしかすると磨けば銀色になるのだろうが、このままがよい。昔からこの姿であった気もする。中蓋や中の筒部分はステンレスなのか、錆や黒みは全くない。中蓋はすっと落ち、道具としての用をなし、その質は変わらない。静謐な佇まいである。

父の死から30年、自分もその父の年齢に追いついた。茶筒の凛とした佇まいを見るにつけ、所有者としての自分をなにやら頼りなく感じてしまう。きっと、時を経た美しさがそこにあるから。

これからも、一緒に時を経て、いつしか、茶筒の所有者としてふさわしい自分になっていたい。